伊藤洋一のRound Up World Now! 5月7日(金)放送分を文字に起こしてみました。後編

今週の放送内容

前編(5月7日(金) 前編へのリンク

  • 番組冒頭
  • 今週【5月7日(金)】のニュースファイル
  • 今週【5月7日(金)】のポイント
    • 悲観論に傾くギリシャ問題と金融市場の動揺? - 今後の焦点 -


後編


今週【5月7日(金)】のポイント (つづきです)

それでは、日本の巨額政府債務問題は大丈夫なのか?
それでは、日本の巨額政府債務問題は大丈夫なのか?【5月7日(金)】
岸田 続いて、このソブリンリスク*1は、日本も他人事ではないのではないか?ということなんですよね
伊藤 最近そういう記事は、あちこちで見かけます。代表的なものとして、「日本の国債は95%国民が持っているので大丈夫だ。」という説はあるが、先物市場などを取っ掛かりとして日本の国債を売り崩すことは可能であって、国際的な金融機関の中には、そういうチャンスを狙っている。」という陰謀めいたことをいう人もいます。実際に、国債先物市場はあるので売り崩しは可能だということは言えます。 ソブリンリスク:(sovereign risk)外国の政府や中央銀行、外国地方公共団体といった事実上の外国国家に対する融資におけるリスク。カントリーリスクと同義で使われることもある言葉だが、厳密に区分するならば、ソブリンリスクは特に国家への融資に関するリスクに限定されている。引用元:ソブリンリスクとは 〜 exBuzzwords用語解説
今週の英フィナンシャルタイムズ紙で「日本国内で国債を消化できなくなる日」という記事がありますが、これは 今の赤字の増加ペースから言えば、2015年という説もありますし、2020年という説もあります。つまり、国内の国民が持つ金融資産、1400兆とか1500兆だとか言われていますが、財政赤字は 大まかに900兆とか*2 そこらへんになっていて、どんどん増えているじゃないですか。税収が、歳入の予算規模の半分も無いような状況が続いたら、それは赤字は増えますよ。だからそういう意味では、日本財政の累積赤字額が日本国民が持つ金融資産の総額を上回るポイントというものは、今のままでいったら必ずきます。いつ誰がどういう形でトリガーが起きるか*3というのを正確に予測するのは難しいと思います。 【参考:sovereign|[形](1)《通例[名]の前で》 (国が) 独立の, 自治の (2)《[名]の前でのみ》 (国内で) (権力・権限が) 最高の (3)(国内で) 主権[最高権力]を有する】引用元:ロングマン英和辞典:桐原書店
分からないんだから、何もしなくてもいい ってことではなくて、ギリシャを笑えないな」と私はずっと思ってまして法人税所得税共に歳入が減ってきている中で、政治はマーケットに頼った資金調達というものを、いつか諦めないとマーケットから必ず、しっぺ返しを食らうということだと思います。
だからギリシャは観光が主な産業なのですが、統計を見ると、国民一人あたりのGDP*4 32,000(ドル)だったかな?結構高いんですよね。そういう数字を信じていいのかというところにも話は及びますし、日本も、身の丈以上の支出を続けていると、ギリシャを笑えなくなる日も来ると本当に私は思います。そういう意味では、自民とか民主ということではなくて いかに財政をdiscipline*5のあるものにするのかというところが、非常に大きなポイントになってくると思います。 【discipline:(1)しつけ (2)(学校・軍隊などの) 規律, 風紀 (3)自制 (4) 鍛錬, 修練, 訓練 (5) (学問の) 分野, 学科|(1) 《通例受け身形で》 〈違反者〉 を懲戒する (2) 〈子供〉 をしつける】引用元:ロングマン英和辞典 :桐原書店
今のままで赤字を続けていたら、必ず日本人の金融資産で財政赤字を賄えるときは時間切れになります。
岸田 国債発行額が、これほど多いと、金利もそんなに上げられないですよね
伊藤 上げたら、利払いが ものすごく増えて 結構大変ですよ、これは。今の金利だから 今の財政が保てているわけで、金利が上がったら どえらいことになります。


米SECのゴールドマン・サックス提訴をこう見る
米SECのゴールドマン・サックス提訴をこう見る【5月7日(金)】
岸田 続いて、ゴールドマン・サックスの問題です。
伊藤 ゴールドマン・サックス、これは 哲学的な論争もあるのだろうと思います。今日皆さんに紹介したのは、ウォーレン・バフェットさんが、アメリカ証券取引委員会が証券詐欺の疑いで提訴した ゴールドマン・サックスについて、「非難されるべき事実は何もない。損失を出した投資家に同情の余地はない。」これは、一つの正論だとは思います。「何故だったら、ゴールドマン・サックスが相手にしていいるような投資家は、みんなプロである。プロであるなら情報の非対称が無いはずであって、知っててやっていたはずだ。」という論理ですよね。だけど問題なのは、ゴールドマン・サックスが非常に大きな利益を出している、且つ 信用を含めて非常に高額な報酬を貰っている。greedy*6ウォール街の代表選手にも言われていて、 greedy:(1) (けなして) 貪欲(どんよく)な, 欲深い (2)(英)(けなして) 食い意地の張った, がつがつした】引用元:ロングマン英和辞典
岸田 そうですね。
伊藤 リーマン亡き後、ゴールドマンの立ち上がりが一番早かったなどという論理があって、私は 明らかに民主党は一種のscapegoat*7にして、ウォール街に対して「もっと国民経済にしっかりと帰依した働きをしなさい」ということを言っているんだろうと思います。
岸田 選挙を意識しているということですか?
伊藤 それもありますし、商業銀行に対して かなり厳しい規制をかけたので、ゴールドマンみたいなinvestment bank*8を放っておいていいのか?という議論になると思います。私は、ウォーレン・バフェットみたいな気持ちは よく分かります。「情報の非対称があるときは、強い方から弱い方に配慮しなければならない」ということはあって、でも この場合ゴールドマンは、ほとんどのケースにおいてプロを相手にしているのだからという議論は成り立つのですけど、実際に政治的圧力として、議会の公聴会で さらし者みたいに扱われていて、それは、ゴールドマンにとってもあまり好ましい状態ではないんじゃないかな?と思ってまして、そういう意味では、取引執行能力の高い,販売力もあるということで、king of Wall streetという風にきたわけですけど、世の中に受け入れられなければ、まともな商売ができなくなるという事実を考慮するならば、私はゴールドマン側にも反省すべき点はあったのかな?と思います。
私は この問題を聞いたときに思い出したことは、インドのタタ・グループの人達は、パルシーといって今のイラン、ペルシャから来た人達なんですよ。インド人じゃないんです。だからカーストに所属していないのでインドで大財閥を作ったんですけれども、彼らの教えは「徹底して社会貢献する」ということなんです。インドに船でやって来て、「頼みますからここでビジネスをさせてください」と頼んだ手前、ものすごい寄進をして やっとインド社会に認められているという経緯もあるんです。だから力の強い者は寄進や社会貢献とかしていかなければいけない。もちろんゴールドマンもしていると思いますよ。そうじゃなくて、「あいつはgreedyだ!」と思われた瞬間に企業は敵対視されるという政治的状況にあるわけですから、そこらへんはゴールドマンも配慮していかないといけないなと思います。いろいろな御意見もあるとは思います。政治を動かしているのは国民の声なので、『「私達は常に正しいことをしてきたんだ」と主張するだけでは、なかなか社会に受け入れてもらえない状況が生まれてきているのかな?』という感じがします。
岸田 今週のニュースファイルでした。


今週の気になる作品

今週【5月7日(金)】の気になる作品
岸田 今週の気になる作品のコーナーです。伊藤さんが注目されている映画や本など、世の中の作品諸々について独自の視点で語っていただきます。今週は?
伊藤 今週は、「1Q84 BOOK 3」についてちょっとお話ししようかなと思います。私は読みながら、「非常に魅力的な小説だな。」「でも、結局何を言いたいんだろうな?」と思いながら読んでました。読みながら「so what? オレは何のためにこの小説に長い時間を費やしているんだろう?」でも、読み終えると「これは絶対、第3巻では終わらないな?第4巻も5巻もあるな?」「そこまでオレは付き合わなきゃいけないのか?」「どうやってこれ 落とし前つけるのかな?」という感じもしました。
岸田 今週の気になる作品は、書籍で「1Q84 BOOK 3村上春樹さんで新潮社からでした。


Check the Tomorrow

明日以降予定されている内外のイベントの中からポイントになるものをピックアップします。

  • 05月10日(月)
    • 米アップル、iPadの日本など米国以外での販売価格を発表へ
    • EU緊急首脳会議開催へ
    • 中国4月貿易収支
    • 中国預金準備率0.5%引き上げ実施
  • 05月11日(火)
    • 米3月卸売在庫
    • 中国4月生産者物価/4月小売売上高 /4月鉱工業生産/4月固定資産投資
  • 05月12日(水)
    • 3月景気動向指数
    • 米3月貿易収支
    • 英中銀インフレ報告
    • 独1〜3月GDP(速報)
    • EU 1〜3月GDP(速報)
    • インド3月鉱工業生産
    • 豪5月消費者信頼感指数
  • 05月14日(金)
    • 米4月小売売上高
    • 米4月鉱工業生産・設備稼働率
    • 米5月ミシガン大学消費者信頼感指数
    • 米3月企業在庫
岸田 来週国内では決算発表のピークとなります
伊藤 そうですね。
岸田 Check the Tomorrowでした。


番組エンディング

番組エンディング
岸田 fujitsu presents 伊藤洋一round up world now! この番組は富士通富士通 : FUJITSU Japan)の提供でお送りいたしました。
伊藤 ということで、伊藤洋一
岸田 岸田恵美子でした
伊藤 Ate' breve*9 Obligato*10


番組存続のためにご協力くださいiTunespodcastをダウンロードおねがいします


番組公式サイト:伊藤洋一のRound Up World Now! | ラジオNIKKEI

下図のように、番組公式サイトの右側にiTunesへ登録するリンクがあります。



脚注

*1:外国の政府や中央銀行、外国地方公共団体といった事実上の外国国家に対する融資におけるリスク

*2:アバウトな数字ですが

*3:引き金を引くか

*4:ユーロのレベルによりますが

*5:自制

*6:どん欲

*7:身代わり

*8:投資銀行

*9:See yoo soon

*10:ありがとう