伊藤洋一のRound Up World Now! 5月14日(金)放送分を文字起こししてみた 後編

今週の放送内容

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  • 番組冒頭
  • 今週【5月14日(金)】のニュースファイル
  • 今週【5月14日(金)】のポイント
    • 日本の政治危機を憂える


後編


今週【5月14日(金)】のポイント

見過ごせないNY市場「誤発注問題」
見過ごせないNY市場「誤発注問題」【5月14日】
岸田 続いて、今週はマーケットが また、非常に関心を集めた週となりました。
伊藤 ことの始まりは、ギリシャ問題なんですけれども、やはり NY時間の5月6日14時40分過ぎに、NYダウが ドスンと1,000ドル近く短時間で落ちて、1万ドル割れそうになったのかな?
岸田 (1万ドル)割りました。
伊藤 割ったんですよ。1回。それで そのあと急激に戻って、その間に世界の株式市場だけではなくて、為替市場とか世界全体のマーケットが震撼した。というのが、一番 私としては、今のマーケットを不安定にしていると思います。
岸田 連動して一緒に揺れてしまったんですね。
伊藤 そうです。ものすごい円高になりましたから。ドル円だと87円だったかな?ユーロ円だと118円でしたかね?
岸田 はい。
伊藤 極端な円高になったわけです。私が一番心配しているのは、あれだけ大きなこと(急激なスウィング)があったのに、「その原因がまだ分からない。」とシャピロ委員長*1が言っている訳ですよ。
岸田 一時、「誤発注かもしれない」と言われたんですけれども、まだそこもよく分からない?
伊藤 分かっていません。金融機関の名前も出ましたけれども、でも、そうすると何が起きるかというと、投資家としては「自分が寝ている間(目を離している間)に、1,000ドルも下がって、5〜600ドル戻るような 不安定なマーケットにオーダーを出しておけるのか?」と考えます。
岸田 市場への信頼感という問題なんですね。
伊藤 そういうことです。そういう意味で言うならば、私は この2週間のマーケットというのはマーケットのシステムそのものがマーケットを不安定にしている要因を抱え込んだ。という風に思っているんですよ。勿論ギリシャの問題も後でやるんですけれども、そういう問題を解決していかないと、投資家の市場に対する新任が戻らないわけですよ。 エス‐イー‐シー【SEC】(Securities and Exchange Commission)証券取引委員会。アメリカで、1934年証券取引所法に基づいて創設された行政機関。公正な証券取引、投資者の保護を任とし、規則制定・捜査などの強力な権限をもつ。 引用元:広辞苑:岩波書店
岸田 インフラの問題ということですね。
伊藤 そうです。SEC*2の人達も、「これは公正ではない」と言っているわけです。もしかしたら、そんな大きなスウィングの中で大儲けした人がいるかもしれないし、一方で大損した人がいるかもしれない。相場のスウィングが大きくなるということは、そういうことな訳ですから。どうも、いろいろと調べてみる*3と、nano second*4という非常に短時間の間に、高速に取引を繰り返して、アルゴリズムに基づいて、大量取引をするシステムがあるんです。high-frequency traders, or HFTs と言われているのですが、そこのシステムが稼働したが故に、bitがないところに、大量の売り*5が来て、ある銘柄によっては1ペンス*6とか。ほとんどゼロに限りなく近付いたところまで相場ができてしまったわけです。 【bit:(1) a bit 少し, 少量, わずか(2) 短い時間, 少しの間】引用元:ロングマン英和辞典:桐原書店  ペニー【penny】(ペンスの単数形)イギリスの貨幣単位。ポンドの240分の1。シリングの12分の1。1971年十進法に改め、ポンドの100分の1とする。引用元:広辞苑
伊藤 だから、Procter & Gamble*7なんかも、60ドルあった株価が、一挙に40ドルを割って39ドル台になり、その後急激に戻ったんです。通常、大勢の人達が取引をしているダウ構成銘柄が急激に落ちることは無いんです。
岸田 「商いが厚いから」ということですよね。
伊藤 そういうことです。というと、今の取引システム上または、取引に参加している証券会社*8,投資会社*9の中に、我々の想像を超えたムーブメントを有するコンピュータシステムが埋め込まれているということではないですか。それは きっちり制御しないと我々はそんな高速取引を持っていないわけですから、不測の損失を被る、それは公正ではないわけですよ。だから私はそういう意味では、過去2週間のマーケットというのは、*10取引所のシステムに対する不安が生じてきたことが非常に重要だと思っています。
来週月曜日(5月17日)かな?報告書が出るらしいので、ある程度のマーケットのメカニズムを公正なものにする努力というのをしていかないと、あまりにもマーケットが激しく動くと、抑制要因になってしまう。だから、そういう意味で過去2週間のマーケットというのは、これから改善すべきことが非常にあるのではということを示した意味で重要だったなと思います。


ユーロは信任を回復できるか?
ユーロは信任を回復できるか?【5月14日】
岸田 続いて、今の問題にも からんでいるのかもしれませんが、「ユーロは信任を回復できるか?」ということです。
伊藤 非常に重要な問題に手が付いていない。というのが私の印象です。アメリカがリーマン・ブラザーズのショックの後に、自国の金融システムを建て直すために用意した金額、8,000億ドルに届かない額だったのに対し遙かに超えて、7,500億ユーロというのは、1兆ドルに近いわけですが、よくよく考えてみると、「誰も強制できない人達がこの問題に深く関与していますよね。」ということが分かります。誰も強制できない人達というのは、ギリシャの国民です。ギリシャの国民に対して、EUもIMFも「こうしなさい」と言えないですよね?
岸田 直接的には無理ですよね。
伊藤 言わないです。政府に対しては「財政赤字削減してください」と言って、300億ユーロの財政赤字削減をします。と、ギリシャの政府は約束しました。でも本当にギリシャの国民が、それを受け入れるかどうかですよね。私はマーケットは先を読んでいると思います。
岸田 先を読んでいる?
伊藤 当面は7,500億ユーロがあるから、ギリシャは借り換えもできるし、新しい債券の発行もできるでしょう。
岸田 時間稼ぎということなんですね。
伊藤 今はいいですよ。だからそういう意味では今週初めは、マーケットが反発したのはよく分かります。でも、その先をちょっと冷静に見てみると、「あれ?ギリシャは緊縮財政を受け入れたけれども、ストは頻発していますね」とか、「国民は今の政策にもの凄く反発していますよね」となると、「半年後、1年後は、ギリシャが一体どうなっているのだろう?」と考えると、また同じ危機が再燃している可能性がありますよね。加えて、ポルトガルはどうだとか、スペインはどうだとか、勿論スペインは政府としては財政赤字削減を早急に打ち出しました。「でも、国民はそれを受け入れるだろうか?」という疑念があります。
非常に残念なことなのですけれども、アメリカの中から「ユーロはもう終わったんじゃないか?」という議論も出ています。
岸田 そこまで出てきているんですね。
伊藤 はい。つまり、「ギリシャは いつかユーロを離脱せざるを得ないだろう。」と。そうなるとユーロというシステムそのものに対しての疑念は残るということが言えると思います。「拡大路線が今 その価値を問われている。」というのが今のユーロだと思います。だから、そういう意味ではユーロの不安というのは残ると思います。残るんだけれども、「限りなくユーロが下落するのか?」というと、そんなことは無くて、適切なレベルというものがあるので、そこをマーケットに参加している方が、もしリスナーとしていらっしゃるんだったら それをどう考えるのか。1ユーロ=1.25ドルはまだ割高なのか、割安なのか考えていく必要があるのかと思います。
岸田 今週のニュースファイルでした。


今週の気になる作品

今週【5月14日(金)】の気になる作品
岸田 今週の気になる作品のコーナーです。伊藤さんが注目されている映画や本など、世の中の作品諸々について独自の視点で語っていただきます。
伊藤 今週は、『生命保険のカラクリ』という本を紹介します。でも私 今、「本」と言ったでしょう?
岸田 はい。
伊藤 本なんだけど、僕は一回も「本」を手にしていないんですよ。で、これね「何が面白かったか?」というと、「ネット上でダウンロードする何人様までは、pdfで全部お見せします。」という本だったんです。
岸田 無料で配信していると。
伊藤 はい、はい。
岸田 そうなんですか?
伊藤 はい。私はネットだけで読んで、実物を手にしなかった本というのはこれが初めてです。今もそれが行われているかというのは分かりません、多分終わっているでしょう。
岸田 正に、電子書籍なんですね。
伊藤 そういうことなんです。なんでそういうことができるのかと言うと、私の友達でもある出口さんというネット生命保険会社の社員の方が書いている本で、いかにネット生命保険会社が革新的であるかという、ある意味広報的な側面もある本なんですよ。だから、「無料でダウンロードして読んでくれる人がいたとしても、それはそれでいい。」と言う考え方なのでしょう。「あっ、こういうほんの広め方もあるんだ。」そういう意味では、気になるリリース方式を採った本だという意味で面白かった本です。
岸田 今週の気になる作品は、書籍というより、電子書籍と言った方がいいのかもしれません『生命保険のカラクリ』(岩瀬大輔/文春新書)でした。
伊藤 でも実物はある(本屋さんで売っている)んですよ。私は電子書籍で読みましたという複雑な関係なんですよ。


脚注

*1:アメリカ証券取引委員会

*2:証券取引委員会

*3:原因が特定できないので分からないのですが

*4:10億分の1秒

*5:offer

*6:ペニーの複数。

*7:P&G

*8:と言っていいのか

*9:と言っていいのか

*10:ギリシャの問題や景気はよくなっているなど問題はいろいろありますが

*11:See yoo soon

*12:ありがとう